特集・樹木の健康診断

危害を与えるキノコ:ベッコウタケ危害を与えるキノコ:ベッコウタケ

台風の多い日本では、街路樹が倒れ重大事故を引き起こす例が後を絶ちません。倒れた樹木を見てみると根が浅かったり、内部が腐朽していたりと、それぞれの原因は見つかりますが、それらを外見上で判断するには熟練した技術が必要です。

街路樹に現われる様々な信号。これらを的確に把握するために、診断機器を用いた科学的な診断を行う動きが活発化しています。東邦レオでは、社内の樹木医を中心に樹木の健康診断を積極的に行ってきました。これら「樹木の健康診断」の最前線について、レポートします。

街路樹診断技術

街路樹の正確な診断手法として、VTA法に基づいた調査が行われています。VTA法(Visual Tree Assessment)とは、ドイツのクラウス・マテック(Claus Mattheck)博士らの開発した樹木診断方法で、以下のような3段階に分けられます。

外観診断

貯留槽に根を誘引する手法

樹木の様々な凸凹や亀裂など、その状態から内部の異常を判定します。外観診断は主として、樹木の外観を観察することにより診断を行うもので、目視を中心にナイフ、木槌、鋼棒など簡単な道具を使用します。重大な危険がないと判定されれば、対象となる樹木の調査はこの段階で終了し、管理用資料として継承されます。結果は診断カルテに記入します。

精密検査

精密検査は、外観からは判らない腐朽の程度や大きさを調べるために、専用の特殊診断機器を使用します。中でも世界的に標準機器となっているレジストグラフは、直径1.5mmの細いキリを樹幹に挿入し、そのときのキリにかかる抵抗力の大小により、材の強度あるいは空洞や腐朽などの樹体内部の状態をある程度把握することができる機械です。測定データは、キリが貫入する際の抵抗の大きさがそのまま波形グラフとして表示されます。

腐朽木データ(クリックすると拡大します)

横軸が測定部深さを、縦軸が抵抗(材の堅さ)を示し、樹木が健全な状態であれば、グラフには一定の抵抗が現れます。抵抗を示す波が、途中不自然な形を示しているような場合は、材の強度が弱く、空洞や腐朽など何らかの異常があると考えられます。レジストグラフ以外にも、最近ではガンマ線や音波を利用し、樹幹内部の状況を外部から測定する方法や、診断データを蓄積し、活用するためのシステムなどが開発・併用されています。

■ 精密検査を実現する機材

樹木診断機器「レジストグラフ」

レジストグラフレジストグラフは、樹幹に細いキリを挿入して、材の健全度を測定する診断機器です。直径1.5mmの細いキリを樹幹に挿入し、キリにかかる抵抗値を測ります。抵抗が大きければ材は健全で、レジストグラフ弱かったり殆ん ど抵抗がない場合 は腐朽しているか空洞化している恐れがあります。

もっと詳しく

樹木診断機器「γ線樹木腐朽診断機」

γ線樹木腐朽診断機ガンマ線を活用し、幹を傷めずに樹木の腐朽状況を測定する次世代の診断機器です。パソコンを利用して、リアルタイムでの内部異常判断が可能です。γ線樹木腐朽診断機国土交通省国総研開発品です(特許第2997764号)。

もっと詳しく

判定

外観診断結果と合わせて、その樹木に残されている物理的強度を評価し、設定している幹の破断基準を適用して健全度を判定します。健康診断の判定基準については、欧米におけるクラウス・マテック博士らの研究成果に基づいています。マテック博士は幹折れ倒木の可能性を次のように示唆しています。

幹の半径に対する健全材の厚さの比(t/R)が30~35%以上のときは、 ほとんど幹折れが起こらない。

t/R率t/R率

t/R率と倒状の関係t/R率と倒状の関係
Mattheck,C.(1995)
Wood-The Internal Optimization of Trees.Arboricultural,vol.19

樹木医・樹木の健康診断に関するリンク集

以下のページにて、樹木の健全診断を行う際の機器・システムについて、詳しくご紹介しています。ぜひご覧下さい。
東邦レオでは、これからも全国の樹木医の方々と共に、樹木の健康診断に関する様々な開発を行っていきたいと考えています。

樹木診断機器「レジストグラフ」 樹木診断機器「ガンマ線樹木腐朽診断機」