最近、「桜の根が歩道の舗装を持ち上げて困っています。」というお問い合わせが増えています。これは、桜に多くみられる根の成長特性から起きる課題で、「根上がり」といいます。樹木根系図説(著者:苅住 昇)によると、桜の代表種ソメイヨシノの根は、中・大径の垂下根・水平型、細根は肥厚型といい、地面に対し斜め下と上層に根をはり、細根が0.5mm以上に発達する特性を持っています。
サクラの根:出典「樹木根系図説」
P384:苅住 昇:誠文堂新光社 (2000)
このソメイヨシノは、明治と第二次世界大戦後に、桜堤や街路樹として全国に多く植栽されました。また昭和39年の東京オリンピックの頃には、高度経済成長の時代を迎え、急激な開発や公害、保護管理の放任等で、全国的に桜が衰退し、その復興を目的に植栽事業が行われたそうです。戦後から東京オリンピック後に植栽された桜は、現在樹齢40年~60年を迎え、幹周りが1mを超える樹木となっています。そして、樹木の成長にともなって、上層に発達した細根も、太く強く成長し、歩道の舗装を持ち上げる要因となっています。
桜は開花の時期には夕方や暗い中歩くこともあり、バリアフリー環境の整備という視点から、歩道の舗装持ち上げ現象についての、対応が求められるケースが増えているようです。
一般的に、桜管理のポイントは5つです。桜堤や街路樹の桜の管理には、行政や地域住民による自治会やNPOなど複数の関係者が携わり、管理をしていることが多くあるようです。しかし、この5つのポイントの実施にあたっては、桜一本一本の状態把握に、樹木医の専門知識を要する場合も多く、通常管理者だけの判断がむずかしいのが現状です。
!5つのポイント
日頃の観察により病害虫を早期発見し、消毒、駆除を行なう。
年に1回は施肥を行なう。(お礼肥、寒肥)
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冬期に整枝、剪定を行なう。
てんぐ巣病を発見したら、すぐに切除する。
土壌改良を含め、根の保護に努める。
財団法人 日本さくらの会ホームページ参照
(※同財団の許諾を得て掲載しております。)
東邦レオでは、社内に在籍する18名の樹木医の内、3名が樹木診断の専門家として活動しています。樹木から発せられる信号はひとつだけではありませんし、幹の中の腐れなど、直接目に見えるものばかりでもありません。そこで、ドイツの樹木診断技術をベースに国土交通省国総研が開発した独自の診断器具等を用い、樹木の信号を定量的に明らかにしていきます。また、樹木診断後、樹木の状況にあった管理作業の計画や、歩道の舗装持ち上げ現象への対策など、具体的な解決策を提案しています。
パワーミックス工法による
桜の歩道舗装持ち上げ現象対策工事
樹木診断をする樹木医
桜の根系調査